紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
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 ヒシの繁茂した「ため池」のその後(3)

   --- 翌年(2007年7月現在)のヒシの状況 ---


  2006年8月にヒシの大群落が水面をほとんど覆っていた津市のため池大沢池を見つけ、その後のヒシの推移を観察し、本ホームページに載せた(ヒシ繁茂  その後(1) その後(2))。

 翌年(2007年)にも、5月から7月にかけてヒシの生育を観察をした。5月7日には小さなヒシの葉が池のほとんどの水面に見えた(写真1)。その後、ヒシの葉は次第に大きくなり、ため池を覆い、6月18日にはため池の水面のほとんどを覆った(写真2、3)。

 昨年も
ジュンサイハムシが発生したが、今年(7月時点)は昨年よりも発生量が多く、6月18日には多数の蛹と幼虫が葉上に見られた(写真4)。堰堤際の水面にはナミアメンボが多数おり、ジュンサイハムシの幼虫に口針を差し込んで吸汁している個体が認められた(写真4)。ジュンサイハムシの天敵としてアメンボ類が重要であると思われる。7月9日になると、多数のジュンサイハムシの成虫が羽化しており、交尾中の個体が多く見られた(写真5)。葉上にジュンサイハムシの黄色〜橙色の卵塊が見られた(写真5)。

 堰堤近くの池の中では、ヒシの葉が少なくなって水面が現れ、浮遊性の藻が浮かんでいる光景が出現した。これは、ヒシの葉がジュンサイハムシによって食い尽くされ、ヒシの葉が少なくなって太陽光が水面下によく入るようになったので、浮遊性の藻の生育が助長されたものと思われる。しかし、一度、ヒシの葉がほとんど無くなっても、直ぐに新たな小さなヒシの葉が生えてくる(写真6)。

 今後も引き続き、ヒシの生育とジュンサイハムシによる食害との競争がどうなるのかを観察してみたい。

(
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初夏のヒシ

(写真1)
2007年5月7日に、大沢池の北西側の池面を撮影。ヒシの葉はまだ小さく、水面が多く見える。ヒシは1年草で、ヒシの実が発芽しては土中に根をはり、長い茎を伸ばして水面に葉を展開する。大沢池のほとんどの水面がこのような状況となっており、ヒシの株数が非常に多いことが分かる。

6月はじめのため池のヒシ群落

(写真2)
2007年6月9日に、大沢池の南側を撮影。ヒシが水面のほとんどを覆い、葉の密度の高い部分が茶色に見える。

6月半ばにため池はヒシ群落で覆われた

(写真3)
2007年6月18日に、大沢池の西側から堰堤方向を撮影。ヒシが池面を覆っているが、昨年8月に撮影したものよりも、茶色に見える部分が少ないので、葉の密度がまだ昨年8月よりも低いものと思われる。

ヒシの葉上のジュンサイハムシの蛹と幼虫

(写真4)
2007年6月18日に、堰堤付近で撮影。多数のジュンサイハムシの幼虫(黒色)と蛹(橙色)がヒシの葉上に認められた。ヒシの葉は著しく食害されていた。ジュンサイハムシの幼虫がナミアメンボ成虫によって攻撃されている(画面中央)。この池ではナミアメンボやアメンボがジュンサイハムシ幼虫の主たる天敵であると思われる。
 

ヒシの葉上のジュンサイハムシ成虫

(写真5)
2007年7月9日に、堰堤付近で撮影。ヒシの葉がジュンサイハムシの幼虫と成虫によって著しく食害されている。中心部から次々と生えてくる葉には、まだ食害痕がほとんどない。交尾中の成虫が多く見られ、葉面上には黄色〜橙色の卵塊も見られる。

ジュンサイハムシの食害によるヒシの葉の消失と芽生え

(写真6)
2007年7月9日に、堰堤付近で撮影。ヒシの葉がジュンサイハムシによって食害され尽くされた後に、新たに小さなヒシの葉が出て来た。ヒシの葉のないところには浮遊性の藻が多量に発生している。水面下には、ヒシの茎が見られる

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